国立国会図書館デジタルアーカイブで竹中労さんの著作が読めるように

すでにニュースで知っていたのですが、国立国会図書館がデジタルアーカイブを広くインターネット上から見られるように整備しているという話があり、個人的には早いうちから注目していたのですが、2023年の竹中労さんの命日を迎えるにあたり、改めてその内容を確認したところ結構な数の著作を会員登録すればパソコンやタブレットでインターネットを経由して閲覧することができるようになっています。

https://dl.ndl.go.jp/

まずは、上のリンクからメールアドレスを入力して会員登録をすれば、検索の画面から著者・竹中労で検索をすると、以下のような著作が読めるようになっています。

・呉子
・団地七つの大罪
・呼び屋
・見捨てられた在韓被爆者
・山谷 都市反乱の原点
・タレント帝国
・逆桃源行
・自由への証言
・ルポ・ライター事始(初版)
・竹中労の右翼との対話
・仮面を剥ぐ
・左右を斬る
・人間を読む
・聞書・庶民列伝(1)~(4)

2023年5月現在で面白そうなのは、ジャニーズ事務所が最初にプロデュースしたアイドルグループ「ジャニーズ」に対する故・ジャニー喜多川氏が行なったセクハラ行為について書いている箇所のある「タレント帝国」、竹中労さんの仕事の中でも広く知られている連載中止になった「エライ人を斬る」についての裁判について、「エライ人を斬る」の内容を紹介しつつその顛末を記録した「自由への証言」あたりは、今だからこそ読んで楽しめるのではないかと思います。

今後も自宅にいながらにして読める本が増えていって欲しいですが、本当に良い時代になりました。「タレント帝国」は当時の大手プロダクションの逆鱗に触れ、ほとんど流通しなかったと言われていますが、今や全国どこにいても読めるようになっているというのも面白いですね。


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AIの美空ひばりに忖度する時代に出版された「美空ひばり」

2019年の紅白歌合戦の目玉(?)企画として、コンピューターグラフィックスで姿かたちを作り、その衣装は森英恵氏がデザインしたものを忠実に再現し、その動きを作るために歌手の天童よしみさんに協力をあおぎ、肝心の声についてはヤマハが製品化している「ボーカロイド」の技術を使って、細かなニュアンスまで再現したとされる「AI美空ひばり」の出演が決まったことがニュースになっています。

先日はその様子を紹介したNHKスペシャルが3回目くらいの再放送になり、恐らく紅白歌合戦の本番で披露されるであろう秋元康氏がプロデュースと作詞を担当した新曲を番組の中で2回同じものを生伴奏とともにNHKのスタジオに人を入れて披露しているところが紹介されていました。

その内容を見ていて何より違和感を持ったのは、司会のNHKアナウンサーが激しく泣きじゃくってAIの登場を紹介し、これは怪しい新興宗教の集まりか、参加者を運営側がリードする催眠不安商法の会場かと思えるくらいの賞賛の嵐に終始していたということです。

一応番組ではお亡くなりになったアーティストを人工的に再現することへの批判があるという点については紹介していたものの、ちょっと美空ひばりさんへの想いが一方向を向き過ぎているのではないかと見ていて思ったのですが、たぶん紅白の当日にも賞賛の嵐に終始するのかと思うと、もっと多くの人に美空ひばりさんの別の面から見た姿を見てもらいたいと思えました。

たまたまテレビを見た後、アマゾンの本の検索て「美空ひばり」と入れてみたところ、12月19日に竹中労さんの「美空ひばり」が「降臨 美空ひばり」という題名で新規発売ということになるようなので、とりあえずここで報告します。古本でも手に入るものの、古本自体に違和感を持つ人もいると思いますし、今回の紅白歌合戦につながる流れの中で、「美空ひばりという人はどんな人なのだろう」という興味がわいた方には、多少竹中労さんのファンとしてのフィルターがかかっているものの楽しく読めるのではないかと思います。

私自身がこうしたブログでいくら紹介しても、実際に竹中労さんが書いたものの方が多くの人に訴えかけるものも多いと思いますので、今回の出版によって多くの人に竹中労さんの書いた美空ひばりが読まれることを期待したいと思います。

(2020/3/9追記 Kindle版が出ましたのでLinkを追加しました)

(2020.6.15追記)

上記書籍販売元の晩聲社へのlinkを追加します。この晩聲社は、ちくま文庫「ルポライター事始」の最後にある「竹中労の仕事」内[単行本・未収録連載]の最後の仕事として記載のある『球型巷談』で対談した尹隆道&成美子夫妻の出版者で、最近になって本の内容をYouTubeで朗読したものを公開しています。


「全日本歌謡選手権」の魅力とは?

昨日の2019年2月22日夜9時から放送された大阪・読売テレビ(ytv)の開局60周年記念ドラマ「約束のステージ」を見ました。番組の中で読売テレビとしての歴史に残る番組として「全日本歌謡選手権」という一般人だけでなく歌手として活動している人でも出演して10週勝ち抜けば自分のレコードを出す権利が与えられる番組の中で繰り広げられるドラマだったのですが、少々思っていたものとは違ったという感じでした。

というのも、「スター誕生」という同じようなオーディション番組の方が多くの人が知っていると思われる中、なぜ「全日本歌謡選手権」なのか? というところの答えをこのドラマから導き出すことは難しかったような気がします。

歌の上手い下手というのは聴いている人が評価すべきものだと思いますが、今回は主人公のお母さん役で出演した石野真子さんは、この番組にスター誕生に出る前に出演して落とされているのですが、その歌声と比べて今回出演した土屋太鳳さん、百田夏菜子さんの歌の実力はどうだったのかということをつい考えてしまいます。それは別に土屋さんや百田さんの事をディスっているのではなく、それだけ「全日本歌謡選手権」は出演者にとっては何を言われるかわからないくらい辛口の審査員を揃え、審査の厳しさに定評があったからです。

ドラマの中では毎回70点以上が合格で(審査員5人で1人の持ち点はそれぞれ20点)、10週勝ち抜けられればチャンピオンになるということが紹介されていたものの、勝ち抜くごとに合格のハードルは高くなるということはあまり伝わってきませんでした。というのも、番組から誕生した歌手3人を審査員役として出演させてしまったため、淡谷のり子さんや竹中労さんの人によっては厳しすぎて逆に敵意が湧いてきそうな辛口の審査員をキャスティングすることは難しかったのだろうとしか考えられないような気がします。

当時の事を知っている人だったら、まず当時の淡谷のり子さんや竹中労さんでも「あんたの歌は嫌い」だとか、「君は歌手には向いていないよ」というような厳しい台詞を出しようのない歌い手を出演としてオファーし、イメージとして当時の審査員に似せたキャスティングの中でも勝ち抜けるだけのポテンシャルを持った歌える役者を出して勝負しなければ、番組を見たことがない人の「全日本歌謡選手権」に対する印象というのは、かなり簡単に10週勝ち抜けそうな番組だと思われても今回のドラマの内容では致し方なかったと個人的には思います。

今の日本はドラマの中であってもかつての「全日本歌謡選手権」の雰囲気を伝えることは不可能なのだという事を感じたという点では見た収穫のあったドラマではありました。そうなるとさらに未来を指向する中での日本の音楽シーンというのは、ことテレビに出演して歌う事については、本当に実力のある人が出られないことが続くのではないか? と心配にもなります。まあ今の世の中はインターネットもありますので、そこからセルフプロデュースでも多くの人に歌を聴かせることはできる分、未知の才能が世に出やすくはなっているとは思うのですが、今のテレビ(地上波)がフィクションの中でも忠実に当時の「全日本歌謡選手権」を再在できなかった点に関しては、本当に残念なことだと思っています。


2019年2月22日夜9時からytv(日本テレビ系列)で「全日本歌謡選手権」再び?

今回の情報は直接竹中労さんについての出演情報ではありませんが、竹中労さんをご存知の方ならおっと思われるのではないかと思います。今年が大阪読売テレビ(ytv)開局60周年ということで特別番組として同局の歴史をひもとく上で重要な番組、参天製薬提供の「全日本歌謡選手権」をメインにしたドラマ「約束のステージ」が放送されるというのです。

設定が現代から昭和50年にタイムトリップしてしまった歌手志望の少女に土屋太鳳さんが扮し、その母親役に自身が全日本歌謡選手権への出場経験を持つ石野真子さんが扮しています。タイムトリップ先でコンビを組む少女にももいろクローバーZの百田夏菜子さん、二人をプロデュースしようとする元歌手の男に向井理さんという、今のドラマ界での目を引くキャストを押さえていて、さすが特別ドラマという感じがします。

ちなみに、「全日本歌謡選手権」のプロデューサーには石黒賢さんが扮し、審査員のキャストに番組からデビューした人達が名を連ねているというのもドラマの見どころになっています。審査員として出演するのが五木ひろしさん、八代亜紀さん、天童よしみさん、城みちるさん(彼は「スター誕生!」出身)で、山本譲二さんだけが本人役での出演だとのこと。

キャスト的に気になるのが、昭和歌謡に深い憧憬がありラジオの番組も持っている半田健人さんの名前があることですが、まさか彼が頭を丸めて竹中労役をするわけがないでしょうが、そうなると竹中労や淡谷のり子、船村徹、そして肝心の山口洋子(ここだけ敬称を省かせていただいております)のいない「全日本歌謡選手権」をやるのか? と思いますが、見もしないで文句を言うわけにもいかないので(^^;)、来週の放送をとにかく見てから改めてまた何か書こうかなと思っています。

ともあれ、テレビを見ている多くの人に「全日本歌謡選手権」という番組の詳細が紹介されるだけでも現代のプロダクション主導の状況に一石を投ずる可能性があるので、放送を期待して見たいと思っています。

・番組公式ベージ
https://www.ytv.co.jp/yakusoku/


岡留安則さんの沖縄に骨を埋める決意

今回の岡留安則氏の訃報を、ネットニュースで知ることになりました。個人的なつながりはない方ですが、竹中労事務所を通じて様々な場に同席させていただけることはあったので、こちらが一方的に存じ上げていたに過ぎないながらも、その動向については常に気になる方でした。

竹中労さんとの関係で言えば、竹中労さんがお亡くなりになるまで岡留安則氏が編集長を務められていた月刊スキャンダル誌「噂の真相」で「竹中労のページ」というコラムを執筆されていたということで、当時事務所を一時期でしたが東京に移していた場所で行なわれた仲間うちでの故人を偲ぶ集いにお呼びして参加されました。その会にはありし日の樹木希林さんもやってきて、岡留氏はその様子を写真撮影し、ちゃっかり「噂の真相」誌上で紹介していて、有名雑誌のえげつなさというのを一般人が見る目線で感じさせていただいたこともありました。

その後、竹中労さんが想いをはせた沖縄に移住し、那覇市内でスナックを経営していた頃に一度仲間うちでおじゃましたことがありました。その時は沖縄で行なわれた竹中労さんの没後20年のコンサート終了後の関係者の二次会で利用したのですが、店内にあった女性アルバイト募集の文句が記憶に残っています。というのも、岡留氏のお店には東京から様々な名のある人がやってくるので、そうした人と実際に会って話したり色んなやり取りをすることがきっと役に立つのでは? という「口説き文句」のような募集文に、本当に野望のある女性がここから這い上がってきたらどうなるのだろうかとあらぬ妄想をしてしまったわけです。

岡留氏はこのように、自分のお店を中心にして人材を集め、「噂の真相」休刊後も新たな活動を模索していたように思います。米軍基地の有無について県民の信を問う県民投票を目前に控えての離脱はご本人が最高に無念だったことでしょう。岡留氏の事を悪く言う方も少なくないと思いますが、いわゆる本土で上から目線で沖縄の問題を見て意見するのではなく、沖縄に腰を落ち着けて活動していた岡留氏の行動について個人的には批判することはできません。さらに、竹中労さんや竹中労さんのアシスタントの石原優子さんと同じく沖縄の海に還るということになると、改めて沖縄という場所がそれぞれの方にとって特別な場所であったのかという風に感じるところです。故人のご冥福をお祈りいたします。


樹木希林さんの訃報を聞いて

2018年9月15日に女優の樹木希林さんが亡くなったというニュースが入ってきました。その前の月に左大腿骨を骨折して一時は意識不明だとか、穏やかではないニュースがあったものの、意識は回復したという話もあり安心していたのですが、こんなニュースを翌月に聞くようになるとはちょっと思えませんでした。

http://routakanaka.blog.fc2.com/blog-entry-10.html

彼女はこのブログや、このブログの前に開いていたブログ(上記リンクでご確認下さい)でも過去に書かせていただきましたが、竹中労さんの箱根の事務所を直接訪問し熱い議論をふっかけてきたというエピソードもあり、その頃から仲良くされていたようです。

竹中労さんが晩年にテレビに出演するきっかけを作ったのもフジテレビの「笑っていいとも!」の「テレフォンショッキング」のコーナーで竹中労さんを指名したこともその一因であり、その後「笑っていいとも!」のコーナーにも竹中労さんは出演していました。NHKBSの沖縄音楽の特集や同じNHK教育の竹中英太郎さんについての番組、民放では他に「イカ天」の審査員や「別冊イカ天」にたまと登場したり、読売テレビ「EX Osaka」(低俗の限界)、テレビ朝日の「ニュースバトル」の映像は現在勝手にYouTubeにアップされていますから見た方も多いでしょう。そうしたテレビ出演によって竹中労さんの事を知った方もいると思います。

竹中労さんの事を語るために山梨県甲府市に出向き、パネリストとして聴衆に竹中労さんの事を語ったことは、今でもはっきりと覚えています。竹中労さんを再びテレビに引きずり出したのは、竹中労さんは自分をセルフ・プロデュースしようとしないので、その点で批判をされていました。竹中労さん特有のテレビとの付き合い方を否定し、無理にでも全国の視聴者の前に竹中労さんを引っ張り出した仕掛人として、私は樹木希林さんのことを評価しています。

竹中労さんはまた、テレビ談語の連載の中で、市原悦子と樹木希林という2名の女優を比べ、「家政婦は見た!」という人気シリーズで名前を売った市原悦子さんの事を、シナリオに沿って楽にやっているとは言わなかったと思いますが、樹木希林さんの方が自分のために作られた長期シリーズがなく、その都度役を作りなおかつ存在感を保つという意味で、「樹木希林さんの方が上」と竹中労さんの分身である架空の座談会の出席者に言わせています。

また、TBSが「美空ひばり物語」を岸本加世子出演で行なった時にひばりさんのお母さんを熱演され、評価も高かったように記憶していますが、その際にも多少竹中労さんと事務所の石原さんとはやり取りがあったようです。竹中労さんが亡くなった直後、過去に「噂の真相」で岡留安則氏が撮影した写真が載った関係者の集まりに樹木希林さんも駆けつけてくださり、竹中労さんの思い出と石原さんとの関係を美空ひばりとお母さんとの関係になぞらえて発言したことを覚えています。ある意味、竹中労さんがお亡くなりになる前にテレビの前で輝いた状況をアシストしてくれたキーパーソンだったと思われます。

個人のご冥福をお祈りいたします。


01-031「自由への証言/週刊読売言論弾圧裁判の記録・私闘の論理」1977年

(書名)自由への証言/週刊読売言論弾圧裁判の記録・私闘の論理
(著者名)竹中労
(出版年)1977年
(出版社)エフプロ出版
(内容)単行本になった「ヱライ人を斬る」の週刊読売の連載中止に関する8年にわたる裁判記録をまとめた一冊(最終的には和解)。松浦総三・丸山邦男・五木寛之・大島渚・今東光の各氏の裁判での証言も紹介されている。
(備考)出版時の摩擦により、店頭にはほとんど並ばなかった。


01-030「浪人街/天明餓鬼草紙―夢野京太郎のシナリオ」1977年

(書名)浪人街/天明餓鬼草紙―夢野京太郎のシナリオ
(著者名)夢野京太郎
(出版年)1977年
(出版社)白川書院
(内容)山上伊太郎原作でリメイクを目指した「浪人街」のシナリオおよび、「大殺陣」、鶴田浩二氏から依頼された「血風!! ラモウ守備隊」などのシナリオを収録。
(備考)「夢野京太郎」は竹中労のペンネームの一つ。


01-029「日本映画縦断3/山上伊太郎の世界」1976年

(書名)日本映画縦断3/山上伊太郎の世界
(著者名)竹中労
(出版年)1976年
(出版社)白川書院
(内容)戦前の傑作時代劇「浪人街」のシナリオを書いたのが山上伊太郎であり、竹中労さんは「浪人街」リメイク運動を多くの人を巻き込んで展開するも頓挫した。そしてキネマ旬報もその中で連載中断となり、当時の白井佳夫編集長は解任された。
(備考)翌年の1977年6月に竹中労さんはキネマ旬報社との法廷闘争に入り、それは1988年10月まで続いた。和解が成立して貴重な史料・資料は著者側の所有となった。


01-028「聞書アラカン一代―鞍馬天狗のおじさんは」1976年

(書名)聞書アラカン一代―鞍馬天狗のおじさんは
(著者名)竹中労・嵐寛寿郎の共著
(出版年)1976年
(出版社)白川書院
(内容)時代劇の大スター嵐寛寿郎に取材し、芸歴50年を語り下ろす。
(備考)聞き書き本のモデルと言われる。